かつらがばれた



不幸は突然やってきた。

ある時、Dさんの会社で、大規模な製品不良が発生した。
Dさんの部署は、対策に忙殺された。
昼は客先回り、夜は製品のチェック。
連日会社に泊まり込んでの大変な作業となったのである。

3日目、疲労もピークに達したころ、営業部隊が帰ってくるまで、Dさんたちは仮眠を取ることになった。
疲労困ぱいのDさんは、ソファに横になるとたちまち深い眠りに落ちていった。

「Dさん、交代の時間ですよ」 数時間の熟睡のあと、Dさんは同僚に起こされた。
むっくり起きあがるDさん。だが、その時、「あっ」という声が起こった。
あわてて頭に手をやった。

かつらが、ずれていた。
ソファで横になったとき、頭が当たり、かつらが動いていたのだ。

(続く)